野良狼と野良少女


「壮馬さん、エミリさんの幼なじみだなんて一言も…エミリちゃんって子、とか言ってたし」


「全部演技だろうね。あの人あれでも役者だし」




ほら、と画像を見せてくる一ノ瀬くん。


そこには “ 期待の新人俳優・葉山壮馬、来期連ドラ出演決定!” の文字と爽やかに笑う壮馬さん。




「新人俳優…?」


「あの人にとって俺はいうこと聞かない生意気な後輩。だからおもちゃにして遊ぼうとしてくんだよ」


「ちょっと待って、いまいち理解できない…かな」


「うん、まあもういいよ。全部終わったことだし理解しなくて」




そう言って一ノ瀬くんはぎゅっと抱きしめてくる。




「…羅奈しか好きじゃない。他の女なんかどうでもいいよ」


「…私も、一ノ瀬くんだけ好き」




一ノ瀬くんに抱きしめられて、愛を感じるのは久しぶりだった。


ずっとずっと、寂しかった。


その寂しさがじんわりと埋まっていくような心地がした





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