この初恋に、ピリオドを
ベテラン捜査官ですら目を覆いたくなるほど凄惨な事件現場なのだが、目撃情報がゼロに等しく、未だ有力な手がかりは見つかっていない。

(絶対にこの犯人を野放しになんかしない……!)

総司は手を握り締め、片方の手でそっと胸元に触れる。総司はスーツで隠しているものの、いつもお守りとしてネックレスを肌身離さずつけていた。それは専門店で買ったものではなく、幼い頃に貰ったビーズを繋げて作ったおもちゃなのだが、総司にとっては大切なものなのだ。

『警察官?とっても素敵な夢だね!私たちを守ってね!』

忘れられない甘く優しい記憶が蘇る。あの日からずっと胸にある正義を信じ、今日も総司は事件と向き合う。

「被害者は百箇所以上刺し傷がありました。相当な恨みを持った人物でなければこのような所業はできません。そこで聞き込みを行ったところ、被害者はご近所トラブル、パート先でのトラブル、さらには実の兄とのトラブルがあることがわかりました」
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