この嘘に、ピリオドを
高そうな料亭の廊下を歩いている間、俯きがちになっていく心春に、両親はこれから会う男性のことを話していく。
名前は椿総司(つばきそうし)。父の部下で優秀で多くの警察関係者が見合い話を持っていったのだが、全て断っていたのだと父が話していた。
「心春、よかったわね。そんな人にお見合いをしてもらえるなんて」
母が笑いかけてくるものの、心春は何も言わなかった。ただ心には虚しさが広がっている。
大好きだった仕事を無理やり辞めさせられ、窮屈な振袖を着せられ、お見合いをさせられ、好きでもない人と結婚させられる。今すぐこの場から逃げてジョンたちの待つあの島へ帰りたいと心春は思った。
(鳥になれたらいいのに……)
もしも鳥になれたのなら、飛び立ってジョンのところへ帰る。そして、ジョンのために綺麗な鳴き声を聞かせるだろう。動物をこよなく愛する彼はきっと、「素敵な歌声だな。鳥界一の歌姫だね」と言うに違いない。そう想像するだけで心が温かくなり、胸がギュッと締め付けられる。