課長に恋するまで
 双眼鏡を覗いていると、腕を組んで通りを歩く男女が見えた。
 仕立ての良さそうなスーツを着た中年男性と、赤いスーツ姿の若い女性だった。クラブの客とホステスのようにも見える。
 女の顔はゆかりではなかったがビルに入った。

 その後も何組かそのような男女がビルに入って行った。
 いわゆる同伴というやつなのかもしれない。
 クラブに来る客と夕食を食べて、そのまま客と一緒に出勤する事を同伴と呼ぶらしい。昨夜、調べて知った。

 同伴らしき男女は五分置きぐらいにビルに入って行った。
 クラブが沢山入ってるビルだから、多いのかもしれない。

 しかし、人が見える度にドキドキする。
 そして違うと、どっと疲れる。

 結構、張り込みは精神力が必要かもしれない。
 でも、絶対に今夜こそはゆかりを見つけてみせる。
 鈴木さんの為にも頑張らなきゃ。

 午後八時半。
 またスーツ姿の男性とピンク色の着物姿の女性の姿が見えた。
 男性は背が高くて、明るい灰色のスーツを着てて……

 えっ!

 上村課長!!

 男性は確かに課長だ。
 そして女性は……探していたホステスだった。
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