課長に恋するまで
「いつ帰ったんですか?」
 ゆかりさんを見た。
「私を呼びに来て、そのままお帰りになりました」
 全く気づかなかった。
「そうだったんですか」
 ため息が出た。
 カシスソーダのあずき色の液体を見ながら落ち込んだ。
「私も聞いてもいいですか?」
 ゆかりさんが好奇心いっぱいの目を向けて来た。
 じっと見つめられて、恥ずかしくなる。
「な、何でしょう」
「一瀬さん、上村さんの事好きなんですか?」

 息が止まった。
 聞かれたくない事だった。

「上司としてじゃなくて、もちろん男としてって意味で」

 男として。
 
 ゆかりさんに言われるとより艶かしく感じて、鼓動が早くなった。

「あ、あの……なんでそんな事を聞くんですか?」
「もちろん、興味があるからです。私、一度一瀬さんにお会いしてみたかったんですよ。上村さんからお話は聞いてましたから」
「課長、私の話をしたんですか?」
 そっちにびっくりだ。
 私なんかが話題になるなんて。
 課長はどんな話をしたんだろう。
< 158 / 247 >

この作品をシェア

pagetop