課長に恋するまで
「ごめん一瀬君。本当にごめん」
「悪いと思うなら指輪外して下さい」

 涙を拭った手で一瀬君が結婚指輪に触れた。

「これ、外して下さい」
「わかった。外すよ」

 仕方なく結婚指輪を外した。

「これでいい?」

 指輪のない左手を見せると、一瀬君が笑顔を浮かべた。

「じゃあ、キスして下さい」
「いや、キスはできないよ」
「指輪もしてないんですから、いいじゃないですか、ねえ」
「ねえって言われても困るよ」
「課長は私の事愛してないんですか?」

 愛って言葉にびっくりした。

 いつから一瀬君とそんな関係になったんだろう。

「もう愛してないんですか?」

 また一瀬君が涙ぐんだ。

「私は課長を愛してます」

 愛って言葉が胸に響いた。
 驚く程、心が揺れる。
 目の前の一瀬君が愛しくなる。
 ダメだって思うのに、腕が伸びて一瀬君を抱きしめた。

 それから、

 それから……。

 電話が鳴った。
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