課長に恋するまで
 スマホが鳴っていた。
 目を開けると、ベランダで揺れてる洗濯物が見える。
 空は茜色に変わり、部屋は薄暗くなっていた。
 

 夢か。

 どうやらソファで寝てしまったようだ。
 
 鳴り続けるスマホに手を伸ばすと、葵からだ。

「お父さん、忙しかった?」
 
 葵の声を聞きながら、急激に現実に戻されていく。

 ぼんやりと夢の内容は覚えていた。
 一瀬君が出て来て、自分でも驚くような感情を抱えて、それから抱きしめた。

 最近、変だ。
 一瀬君がほぼ毎日夢に出て来ている。
 しかも毎回泣かれて、キスをせがまれる。

 これじゃあ、欲求不満みたいじゃないか。
 いくら一人が長いからって、部下にキスをせがまれる夢を見るなんて、どうかしてる。
 一瀬君にも申し訳ない。

「お父さん、聞いてるの?」

 受話器越しにぴしゃりと叱るような葵の声が響いた。
 後ろめたさが倍増する。
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