課長に恋するまで
 渋谷でランチをした後は、映画を観た。
 聡さんが見たいと言ったアクション物だ。
 映画が終わると、夕方になっていた。

「お酒でも飲まない?」

 聡さんにそう誘われ、銀座まで移動して聡さんがよく行くというワインバーに入った。
 黒を基調とした店内はふらっと気軽に入れる感じではなく、高級感があった。大人の社交場って感じがする。
 
 カウンター席に聡さんと並んで座った。

「平野さん、いらっしゃいませ」

 顔なじみらしいソムリエがそう聡さんに声を掛けた。

「お綺麗な方を連れてますね」
「うん。綺麗でしょう。僕の大事な人」

 聡さんが自慢するように言った。

 大事な人って言葉に胸がちくりとした。

 それから聡さんは私たちが婚約した事を話した。
 嬉しそうに話す聡さんにどんどん胸が痛くなる。

 なんだろう。
 この胸の痛みは……。

 聡さんと一緒にいて楽しいのに、なんで苦しくなるんだろう。
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