愛のかたち
 翌日の夜に翔は帰宅した。

「スムーズに片付いて良かったよ」

 翔は安堵したように溜め息を漏らしてから、口元を緩めた。

「お疲れ様。良かったね」

 そう返しながら考えていたことは、ただひとつ。
 出産間近だった彼女のことだ。
 翔が口にした「スムーズに片付いた」が、「無事に生まれた」に聞こえた。

 あの日、駅のホームで二人の姿を見かけてから、彩華は良からぬ想像ばかりを繰り返すようになっていた。そして、外出すればいつも翔の姿を探してしまうようになった。そんなことをしているからいけなかったのだろうか。
 それから一月程経ったある日、普段は通らない道を歩いていた彩華は、車道を挟んだ向かい側の歩道を歩く翔の姿を見付けた。傍らには以前駅のホームで翔と一緒にいた派手な女性の姿があった。そして、彼女はベビーカーを押していた。
 傍から見れば二人は夫婦だった。

 翔の子供なのだろうか。
 ふと、そんな考えが彩華の頭を掠めた。
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