愛のかたち
 当面の生活の心配はなかった。翔が彩華の生活費の面倒を見ると言ったからだ。これが夫婦の情というものだろうか。それとも、結婚する時に「俺が責任を持つ」と言った手前、後に引けなかったのだろうか。
 だが、彩華は複雑な心境だった。健太から聞いていた『金銭面の援助』の相手が、子供の母親から、自分に変わっただけのように思えたからだ。妻の座を明け渡し、立場が逆転したようで、何とも言えない気持ちになった。例え離婚原因が翔にあったとしても、いつまでも翔に頼り続けるわけにはいかない。仕事が決まるまで、と彩華は決めていた。
 しかし、自分に何が出来るのだろうか。

『社会に出たら通用しない』

 あの日翔に言われた言葉を思い出す。
 この歳まで外で働いたことのない自分を受け入れてくれるところがあるのだろうか。篩にかけられて、最後まで残れる自信はなかった。
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