愛のかたち
 思案に暮れていたそんなある日、健太から電話があった。
「とりあえずおいで」と言われた彩華が、その夜久しぶりに『いとう家』を訪れると、そこには野上の姿があった。

「どうも。お久しぶりです」

 彩華が挨拶すると、野上はいつもの柔和な笑顔を見せた。

「健さんから、白藤さんとのこと聞いたよ。一人で大丈夫?」
「ああ……はい。まあ、大丈夫ではないですけど、何とか」

 野上が眉をひそめた。

「彩華ちゃんが仕事探してるって健さんから聞いてて……」
「そうなんです。でも自分が何をしたいのかもわからなくて……。本当は『何をしたいか』なんて考えてる場合じゃなくて、『何が出来るか』を考えないといけないんですけどね。一人じゃどうすることも出来なくて、健ちゃんに相談してたんです」

 彩華は野上に心境を打ち明けた。
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