愛のかたち
 翔の声が頭から離れない。当たり前のように「彩華」と呼んだ翔に、戸惑いと切なさと、そして安心感を覚えた。
 タイミングが良かったのか悪かったのか、野上のせいなのかお陰なのか、翔に生活費の断りの話をしそびれたことに気付いた。

「彩華ちゃん、今何考えてる?」
「え? あのー、えっと……」
「わかりやすいなぁ。白藤さんのことだね」
「……はい」
「おいおい、正直過ぎるだろ。ちょっとは気遣ってくれないかな」

 野上が微苦笑を浮かべた。

「彩華ちゃん?」
「はい」
「ずっと、うちにいてね」
「え、何ですか急に。勿論、そうさせてもらうつもりです」
「……良かった」


 自宅に戻った彩華は、いつものように明日の献立を考えていた。これも彩華のひとつの楽しみになっている。

 懐かしい音楽を耳にして当時の恋人を思い出すように、あるものを食べた時、一緒に食べた相手を思い出す、なんてことはあるのだろうか。
 数えきれない程作った、翔の大好物だったチキンカツ。翔はそれを食べると、自分のことを思い浮かべたりするのだろうか、と、彩華はそんなことをぼんやり考えていた。

 明日はチキンカツにしよう。
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