愛のかたち
「何の話?」

 俯いてなかなか話さない翔に彩華が尋ねた。

「俺の子供じゃなかったんだ」

 翔がボソッと言った。

「え、どういうこと?」
「正直言うと、あの日のことはあんまり覚えてなかったんだ。かなり酔ってて記憶が途切れ途切れで。ホテルに行ったことは覚えてたんだけど……」
「でも、その……彼女と関係を持ったんでしょ?」

 自分で聞いておきながら、耳を塞ぎたくなった。

「それが……わからなかったんだ」
「え? わからなかったって、どういうこと?」
「翌月に彼女から電話があって、子供が出来たって言われたんだ。あの時の子だって言うから、頭の中が真っ白になって……」

 翔が溜め息を零した。
 知りもしないその状況が頭に浮かんで、彩華は胸が苦しくなった。

「彼女、俺が客との付き合いで行ったクラブの子だったんだけど、酒が全く飲めない子でさぁ。でも、金が必要でそこで働いてるって言ってたんだ」

 彩華は頷きながら黙って聞いていた。

「後から考えれば、そりゃ飲めないはずなんだ。彼女、その時すでに妊娠してたんだ」
「――えぇっ!?」

 声を上げた後、彩華は二の句が継げなかった。
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