初めては好きな人と。

epilogue



「…き…、美月」

 名前を呼ばれて重たい瞼を持ち上げると、心配そうな顔の護が目に映る。

「護…」
「夕飯できたけど、起きられる?」
「あ、ごめん…寝ちゃってた」
「気にしないで。体無理させちゃったから…」

 体を起こすと、下腹部に鈍い痛みが走り、行為を思い出して恥ずかしさで顔が火照ってしまう。

「照れてる、かわいい」
「だって…」

 ーーー初めては、好きな人と。

 夢が、叶ってしまった。

「まだ、夢の中にいるみたいで」

 この世界の何十億人という人の中で、施設という特異な環境で護に出会ったことだけでもすごいことなのに、互いに惹かれ合って一つになれた。

 これを、奇跡と言わずして何というのだろう。
 
「夢じゃないよ。だって、ほら、ちゃんと触れて美月を感じられる」

 護の手が伸びてきて私の頬に触れる。
 私たちは、見つめ合いながら、どちらからともなくキスを交わす。
 それは、確かに甘く柔らかな感触を伴っていた。



 けれど、それと同時に
 やっぱり私を夢心地に誘う魔法の口づけだった。




ー完ー
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