あの頃からあなただけが好きでした

 その計画が狂い出した。
 つい、仕事に追われる(そう俺には見えていた)
キーナンを責めるような口調になってしまって
いた。


「月に1度会うのだけは続けないと、愛想つかされるし。
 それは死守したい」


 キーナンもこの恋について危機感はあるようで、自分に言い聞かせているように俺には見えた。


 それから取引で王都へ行った時に、ジュリアに贈る指輪を買った、と見せてくれた。
 この話はマリオンに話してもいいけど、口止めだけはしっかり頼んでおけよ、と言った時の目付きがイヤらしい感じで。
『何だよ』と睨んだら、
『ま、カートも頑張りな』と軽く躱された。


「俺達、ブルーベル兄弟は揃って、オーブリー
子爵に殺されるんじゃないかな」

 そう言ってキーナンは可笑しそうに笑っていた。
 本当に笑って、笑っていたのに。


 俺とキーナンがふたりだけで話したのは、それが最後になった。


 ちょっとやつれて、疲れていたようだったけど。
 キーナンは笑っていたのに……
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