溶け合う煙
食事はどれもこれも美味しかった。

彼の話も面白いし、言葉や文化の壁なんかどこにもないような気がしてくる。

デザートを食べ終え、食後のコーヒーを飲んでいると支配人が料理の感想を聞きにやってきた。
そして、今の季節はレストラン内の庭園のもみじが色づき、食後の散歩にちょうど良いと勧められたので、二人で歩くことにした。

席を立ってからトーマスはずっと私の手を離さない。
こんなにぐいぐいと来られるのは初めてでどうしたら良いのか困る。

外は冷えるからと自分のスーツのジャケットを私の肩にかけてくれたりもした。

そして周りにスタッフがいないことを確認すると、私はトーマスに引き寄せられ、後ろから抱きしめられた。

心臓が…やばいっ!ドキドキしてるの聞こえちゃう!

「…理沙。一目ぼれなんだ。」
トーマスが切ない声で言う。

「君は毎朝あそこにいくだろ?ひと月前に君を見つけてからずっと話かけるタイミングを探していた。」

えっ?そんなに前から?

スマホでニュースを見るのに集中していたせいなのか、あのスモーキングエリアにこんなイケメン外国人がいるなんてまったく気づいていなかった。

「本当なら、もっとデートをして少しずつ距離を縮めたかったんだ…。」

トーマスは私を抱きしめたまま話を進める。

「だけど、その間に他の男に取られるなんて絶対に嫌なんだ。…理沙、僕の恋人になってくれないか?」

あまりの急展開に頭がついていけない。

「…Please。お願いだ。Yesと言って欲しい。」
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