甘く、溶ける、君に。


「……ねえ、遥乃」



名前を呼ばれたかと思えば、突然田邊が立ち上がって。


それは一瞬のことで。


私の机に手を置いて、もう一方の手で私の顎を掴んで、引き寄せて、触れそうな距離まで近づいて。



何? ……何、田邊?


どうしたの? 突然の田邊の行動に、私は目をパチパチするしかできない。



「俺、結構……初めて焦ってるかも」



言われてすっと離れる顔。


ふっと上がった口角は、何故?


キス、したわけではないけど。


こんな教室でここまで顔を近づけてくることとかなかった。

角度によってはキスしてるみたいに見える、と思う。


今はまだ人も少ないとはいえ、人前ですることはなかった。



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