甘く、溶ける、君に。


何? どうしたの、田邊。


真意が読めなくて、ふらっと教室を出て行った田邊には聞くこともできない。


……まぁ、でも……特に何か深い意味があるわけじゃないってどこかでわかってる。


だから聞かなくたっていい。戻ってきて「さっきの何?」なんて愚問も投げない。


それが私と田邊の関係だから。




……ふと、胸ポケットに入れていたスマホのバイブ音に気がついた。

メッセージアプリを開いて差出人と内容を確認すれば、普段の私を思い出させてくれるような気がした。


好きとかよくわからない感情を考えない、普段の私。



差出人は、神崎先輩。

内容は「今日、うち来ない?」というもの。


朝、両親がいないこと知らされたのかな。神崎先輩からの連絡は比較的朝が多い。


なんの予定もない、断る理由もない私はすぐにOKの返信をして自分の席に座り直した。



窓の外から聞こえる、私には縁のない運動部の掛け声を聞きながら予習のための教科書を開いた。




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