甘く、溶ける、君に。



『……ベランダ、出てきてよ。待ってるから』



直後に隣から、ガラッと音がした。

窓を開けた音。ベランダに、千輝くんが出た音だ。



会いたいよ、会いたいんだってば。



顔も見たいし、スマホなんて煩わしい。

直接聞きたいの、機械なんて通したくないの。


でもダメなんだよ、ダメ。戻れなくなってもいいの? ダメだよ。


だけどやっぱり私は自分に甘くて、身体が勝手に動いて。勝手に動いちゃって。



……好きなんだもん、しょうがないよ。

違う、違わないけど、消さなきゃ。


自ら千輝くんに、溺れに行ってどうするの。


クッションを置いて、立ち上がる。


少し歩いて、窓に手をかけて。


千輝くんに対しての私の理性って、どこ。



本当に、制御のせの字もない。



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