甘く、溶ける、君に。


一瞬で触れて、一瞬で離れた唇。

考える隙も、恥ずかしがる隙も与えないような。


何が起きたかわからなくて、少し遅れて周りから悲鳴に近い声が上がったのが聞こえた。


見て見ぬ振りをしてたか、見ないふりをして楽しそうにこちらを見ていたような周りの人達。



全然わからない。

いま、何が起こってる?




「……本気だよ、俺は」




今度は私に向けてじゃなく、遠くに向けて言うようだった。


きっと、千輝くんに対して。



"本気"って、何の話?



田邊が私の好きな人を本人にバラす、とかそんなの遥かに上回る衝撃で、何も考えられない。


田邊の腕のせいで周りの人がどうなってるか、千輝くんの顔も、見えない。



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