甘く、溶ける、君に。
「……こうやって、誰とでも簡単にキスするんだろ?」
触れないギリギリ、私にしか聞こえないような小さい声。吐息がかかって、おかしくなりそう。
こんな状態で声なんか、出せない。
キスも、この距離も、慣れてるし、今更すぎる。
これは相手が千輝くんだから?
私じゃないみたい。いつもこういう時、余裕なのは私のほうなのに。
「……ち、ちがう……」
何も違わない。やっと出たのは、否定の言葉。
何を今更。今更何を言ったって無駄。千輝くんは全部知っているはず。
なのに、違わないことを、違うと否定したかった。
千輝くんに知られたくないなんて思いが、まだあったのかもしれない。