実はわたし、お姫様でした!〜平民王女ライラの婿探し〜

34.ポーカーフェイスは難しい

「姫様にお戻りいただけて、本当に良かったです」


 城に戻って数時間。色んな人が引っ切り無しに挨拶へとやって来る。
 大臣たちお偉方はもちろん、後継者教育の講師や、少し会話を交わしたことがある程度の貴族まで、千客万来だ。


「そう言って貰えて嬉しいわ」


 これは先程から訪れる人たちに対し、何度も返している言葉。
 だけどそれは、半分本当で半分嘘だ。

 戻ってくれて嬉しい――――そう言われるほどの何かを、わたしは未だ成し遂げていない。当然彼等は『嬉しい』と思ってくれているんだろうけど、それは国の未来を想ってのこと。

 もちろん、それが不服ってわけではない。
 ただ、何となく悔しいだけ。
 いつか本当の意味で、国に必要とされる人間になりたいなぁって思うから。


「お帰りなさいませ、姫様。お戻りいただけて、本当に良かった」


 多分に漏れず、バルデマーとも全く同じやり取りを交わす。

 彼は大きな花束とたくさんの贈り物を手に、わたしに会いに来てくれた。相変わらず綺麗な顔立ちに、王子様みたいな風貌や所作。侍女達もほぅとため息を吐いている。


「こうしてまた、姫様とお茶が出来ることを嬉しく思っております」

「ありがとう、バルデマー。里帰り中も、手紙や贈り物をくれたし……あちらまで会いに来てくれたことも、嬉しかったわ」


 ティーセットを間に挟み、わたし達は互いに微笑みを浮かべる。

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