実はわたし、お姫様でした!〜平民王女ライラの婿探し〜
「シルビア様……」


 咎めるような声音。見ればアダルフォは、ほんのりと頬を紅く染めていた。


「実はアダルフォは、クラウス殿下の大ファンなんですよ? 彼のお兄様と殿下が仲良しでいらっしゃったから、その縁で幼い頃から目を掛けられていたのですって。
姫様、アダルフォは一見クールに見えますけど、その実『殿下の役に少しでも立ちたい』という理由で騎士に志願するほど、熱い男なのですわ」


 シルビアの言葉に、アダルフォは恥ずかしそうに俯く。


「そうなんだ……」


 言いながら、わたしは複雑な心境だった。


(アダルフォは初めて私に会った時、どう思ったんだろう……)


 わたし達が初めて会ったのは王太子様の葬儀の日。彼は、王都で働く理由だった王太子様を亡くした上、わたしにヒステリックにあたられて、相当辛かったんじゃなかろうか。

 今だってそう。本当はアダルフォは、わたしじゃなくてシルビアに仕えたいんじゃないかなぁなんて思う。
 今日のアダルフォはいつもより表情豊かで何だか楽しそうだし、とても優しい顔をしている。シルビアのことを護りたい、大切にしたいんだってわたしにまで伝わってきた。


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