実はわたし、お姫様でした!〜平民王女ライラの婿探し〜
(なるほど……こうやって会話に引き込むのかぁ)


 わたしも一緒になってアダルフォの顔を見た。


「――――はい。年の離れた兄が一人おります」


 観念したように、アダルフォが答える。わたしはついと身を乗り出した。


「お兄さん? 王都に住んでいるの?」

「いえ。兄はいわゆる辺境伯で、国境の領地を護っております」


 一度会話に加わってしまえば一気に抵抗が無くなるらしく、アダルフォはすんなりと質問に答えてくれる。


「国境かぁ。行ったことないけど、ここから相当遠いのよね?」


 頭の中に地図を思い描きながらわたしは尋ねる。アダルフォはコクリと小さく頷きつつ、憮然とした表情を浮かべた。


(っていうか、アダルフォって辺境伯の弟だったのか)


 シルビアがアダルフォに兄弟が居ることを教えてくれなかったら、ずっと知らないままだったかもしれない。初めて知ったアダルフォの一面に、わたしは思わず小さく唸った。


「だけど、ブラコンなら、どうしてアダルフォは王都で働いているの?」


 折角の機会だし、わたしはアダルフォに質問を重ねてみる。


「それは――――――」


 アダルフォは言い掛けて、またすぐに口を噤む。何やら困惑した表情だ。


(ちょっと、グイグイ行き過ぎたかな)


 アダルフォにも、他人に軽い気持ちで踏み込まれたくない領域があるのだろう。王になるからには、今後はそういった領域にまで踏み込めるようにならないといけない。人心掌握術とかいう技術らしいんだけど、まだまだ習得は難しそうだ。


「アダルフォったら……素直に『クラウス殿下の力になりたかった』って言えば良いじゃない?」


 シルビアはクスクス笑いながら、そっとアダルフォの顔を見る。


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