英雄の可愛い幼馴染は、彼の真っ黒な本性を知らない
獅子令嬢と町の花娘
 美男子と出会い、情熱的な恋愛を経て結婚する、という流れは、年頃の少女ならば誰もが夢見るものだ。すっかり結婚適齢期を過ぎてしまったマーガリーも、幼少期の頃は、他の少女達と同じような憧れは持っていた。

 王族に継ぐ人気物件は、もちろん侯爵家のクリストファーだろう。

 容姿端麗で思慮深く、柔和な笑みは分け隔てなく優しく、それでいて騎士団に入団した頃から誰よりも最強と謳われた男だ。彼の妻に、と夢見ない女はいなかった。

 二十歳にして婚約者もないクリストファーは、むさ苦しくもなければ、相手の歳に関係なく礼儀正しい。侯爵家の一人息子でもあり、将来は立派に家を継ぐ姿も容易に想像がつき、彼を狙っている女性も多くいた。

 マーガリーも、騎士見習いだった頃は少しだけ夢を見たものだが、それは、次第に純粋に強さへの憧れに変わっていった。クリストファーは、どんなに褒められても驕ることなく、「自分にはまだ強さが足りない」のだと先を見据え、努力を重ねていたからだ。

 その頃には強くなっていたマーガリーも、男性と並んで、国を守りたい方に気持ちが傾いていた。
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