だって、恋したいもん!

第百十八話  今度ちゃんと







私は彼の言葉に驚いて思わず講堂を飛び出していた。



廊下を走り、階段を降りて渡り廊下まで夢中で走った!





「理佐ぁー!!」

と、私を呼ぶ声でふと我に返った。


理佐「え………?」


茜「理佐ぁー! ハァッハアッハァッハアッ……あんたこんなに足早かったっけ?」

理佐「あ、茜……ごめぇん」


茜「まったくあのバカ!!あんなタイミングで言わなくても……」

理佐「え、でもそんな意味じゃなかったのかも……」

茜「そんな意味じゃなかったらどんな意味なのよ!!?」

理佐「え、そのぉ……なんて言うか……」



「渡邉さーーん!!」


と、遠くで呼ぶ声がして二人で振り向くと…

彼がこちらへ向かって走ってきていた。



義雄「ごめん、オレ……なんか……」

茜「あんたねぇ!!あんなとこでいきなり告白なんてしなくても…!!」

義雄「いや、違うんだよ!」

茜「え!!?」

義雄「違うんだよ! オレ…なんか興奮してて……」

茜「何よ!!?」


義雄「いや、そのぉ……オレ『渡邉さんのキーボードが好きだ!』て言ったつもりだったんだけど……」

茜「はぁーー!!?」

義雄「ごめん、何かライブ終わったばっかで興奮してて……」

茜「何よそれ!!?」

義雄「ごめぇん……」





理佐「アハハッ、」

茜「理佐!!?」


理佐「アハハ……なんだ!可笑しぃ!!♪」

茜「えーー!!?」


義雄「ごめん、でも……渡邉さんのことは…」

茜「……ことは??」


義雄「あ、いや…ごめん、なんでもない!」




キーンコーンカーンコーン……


義雄「あ、やべっ!予鈴だ!!」

茜「うそ!戻らなきゃ!!」

理佐「え!?後片付けは?」



美波「理佐ぁー!!」

と、上の階の窓から美波とおぜちゃんが顔を覗かせて手を振っていた。


尾関「もう後片付け終わったよー!教室行こー!」

と、手招きしていた。



私たち三人、小走りで階段を登り始めた。



茜が前を走り、彼は私のスピードに合わせて私と並んで走っていた。

すると彼が小声で…


義雄「ごめんね、また今度ちゃんと♩」


と、言ってスピードを上げて茜も抜かして行った。


理佐「え!!?」


茜「ちょっと西野くんずるーい!!」

義雄「ごめーん、オレ次体育なんだー!着替えないとー!!」

と、言ってフルダッシュで行ってしまった…





「今度ちゃんと」て……


どう言う意味なんだろ……?







第百十九話へつづく…











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