だって、恋したいもん!

第百八十四話  カミナリ







家の近くまで帰ってくると、彼が心配していた夕立ち雲が空を覆い始めた。


遠くの空が光っていたが徐々にこちらに近づいて来ている。


カミナリもゴロゴロと低い音を唸らせていた。


するとすぐにポツポツと大粒の雨が降り始めた。



義雄「わーやばい降ってきたー!」

理佐「うん、どうしよう?」

義雄「ローソンの軒で雨宿りさせてもらおうか?」

理佐「うん、そうだね」


と、言って二人でこの前別れたローソンの軒下に入り雨をやり過ごすことにした。


するとすぐに本降りの雨になってきた。


義雄「うわぁー、ギリギリセーフだったね」

理佐「うん、あとちょっと遅かったらずぶ濡れだったね」


と、言った瞬間辺りを真っ白にする光と共に大きなカミナリが鳴り響いた。


ピシャッ!!ゴロゴロゴロゴロー……


理佐「キャッ!」

と、思わず私は彼の左腕にしがみついていた。




数秒間鳴り響くカミナリに私は顔を上げられずにいた。


私は怖くて彼にしがみついたまま離れられなかった。




そしてカミナリの音も鳴り止みようやく私は目を開くことが出来た。


彼はしがみつく私の左手をしっかりと右手で握ってくれていた。



理佐「え…あ、ごめん…」

と、私は慌てて彼から離れた。



義雄「大きな音だったね、どこか近くに落ちたかもね」

理佐「うん……怖かった…」


義雄「大丈夫だよ、ここに居れば」

理佐「うん……ごめんね…」






義雄「可愛いね…笑」

理佐「えー……だってあんな大きな音するんだよ!家の中でも怖いのにこんな外で…」

と、言うとまた光と共に大きなカミナリが鳴り響いた。


ピシャッ!!ゴロゴロゴロゴロー……



私はまた…

理佐「キャッ!」

と、言って彼の胸に飛び込んでしまった。


理佐「あ、ごめん…」

と、離れようとしたが彼は両手で私の肩をそっと抱き寄せてくれた。



義雄「怖いんでしょ?いいよこのままで…オレが盾になってあげるよ」



理佐「ごめん…」

と、私はそのまま彼の腕の中に身を委ねた…











理佐「優しいんだね…」

義雄「ん……?」


理佐「ますます好きになっちゃうよぉ……」


義雄「え?どうしたの」


と、彼には聞こえないぐらいの小さな声だったので彼は聞き返してきた。



そして今度は彼にもはっきり聞こえる声で…

理佐「何でもない!」

と、答えた。


義雄「ずるいよ、言いかけてやめるなんて…」


理佐「それはよしおくんもだよぉ…」

と、また彼には聞こえないぐらいの声で彼の胸の中で言った。






そうしているうちに雨も小降りになってきてカミナリも遠ざかり音も小さくなっていった。




理佐「ごめん……もう大丈夫…」

と、私は彼から離れた。


義雄「もうちょっとで止みそうだからもう少し雨宿りさせてもらおうか…」

理佐「うん……」

とだけ言って私はまた彼の左横へ並んで立った。




徐々に空も明るくなり沈みかけの太陽が雲の切れ間から顔を覗かせていた。


雨も止み、辺りは屋根から落ちる雨の雫の音が響いていた。






義雄「もう大丈夫かな?」

理佐「うん、明るくなってきたから大丈夫じゃないかな?」


義雄「すごい夕立ちだったね」

理佐「うん…西野くん帰れる?傘取ってこようか?」

義雄「大丈夫だよ、もう降らないでしょ?」


理佐「じゃぁここからは一人で帰れるから…」

義雄「大丈夫?」

理佐「うん、もう平気」

義雄「カミナリ鳴ってもしがみつく人いないよ?」

理佐「もぉー!誰にも言わないでよぉー」

義雄「ハハハ、じゃぁ気を付けてね」

理佐「うん、西野くんも滑るから気を付けてね」


と、言うと彼は自転車に乗り左手を振りながら走って行ってしまった。







第百八十五話へつづく…











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