だって、恋したいもん!

第三十四話  むしろ







ピザ屋の前まで来たけれど彼は店を通り過ぎた。


理佐「あれ?西野くん、ここじゃ…」

義雄「あ、その前自転車停められないからあっちの十字屋の前に停めて行こうよ」

理佐「あ、そうなの?」

義雄「ギターの弦買いたいからさ、その時に店員さんに頼んでみるよ」

理佐「うん……」

義雄「ちょっとだけ付き合ってくれる?」

理佐「うん、いいよ」


と、言って二人で楽器屋に入ることにした。


楽器屋の地下に降りていくとエレキギターとエレキベースのフロアだった。


理佐「わ~すごーい、カッコイイ♪」

義雄「買うの決まってるからすぐ終わるからね」

理佐「うん、ゆっくりでいいよ」


店員「おう!西野くん」

義雄「あ、山岡さん」

店員「可愛い子連れてんじゃん!彼女か?」

義雄「違うよ!ただの友達だって!からかわないでよ!」

店員「照れんなよー!いつから付き合ってんの?」

義雄「だから違うってー!」

義雄「これ!弦買うから早くレジ行って!」

店員「はいはい、毎度ありぃ♪」

義雄「もぉー!変なこと言わないでよ!」


また私はそのやりとりに入る隙がなくただ呆然と見ているだけだった。



義雄「ごめん、お待たせ」

理佐「うぅん…」

義雄「ごめんね、何か…」

理佐「え、あ……大丈夫……」

義雄「自転車置いといていいって言ってくれてるからここから歩いて行こう」

理佐「うん……」



そう言って階段を上がり店の外へ出ると…



「あれ? 理佐……?」


理佐「あっ! 美波!!」

美波「あれ? 西野くん…」

義雄「あ、小池さん…」

美波「買い物?」

義雄「うん、ギターの弦買いに…」

美波「ふぅ~ん、そうなんだぁ…」


美波「二人ってそんな仲良かったっけ?」

理佐「え、ちょっと美波……」

義雄「あ、違うんだ!本屋に付き合ってもらうだけだったんだけど、オレが無理やり引っ張っちゃって…」


美波「ふぅ~ん、いいじゃん♪お似合いだよ♪」

理佐「え、ちょっと美波ぃー!」

美波「じゃあ、あたし行くから」

理佐「ちょっとぉー!!」

美波「大丈夫―! あたし口固いからー!」


義雄「ごめん、何か勘違いされちゃったかな?」

理佐「あ、うぅん…大丈夫だと思う」

理佐「私こそごめん、迷惑だよね…」

義雄「そんなことないよ全然!」

義雄「むしろ渡邉さんが彼女だったら嬉しいよ!」


理佐「え…………?♪」


義雄「あ、ごめん!オレこそ迷惑だよね…こんなこと言って……」

理佐「え、そんなことなぃ……」


義雄「…………」
理佐「…………」



義雄「あっ! 行こうよ、ピザ食べに!」

理佐「う、うん! そうだね♪」


そう言って二人で歩き始めた。



自転車が無い分、彼との距離が近くて私の心臓は破裂しそうなほどドキドキが止まらなかった。







第三十五話へつづく…











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