溺愛前提、俺様ドクターは純真秘書を捕らえ娶る


 当初の目的は、晃汰さんを好きになってしまったことで迷いが生じ始めている。

 でも、もし私が妊娠しなかったら? この婚姻関係は終わりを迎えてしまう……?

 子どもを設けられる人と再婚する?

 こんなに近くで彼の熱を受け止めているにもかかわらず、またどうしようもない思考が働く。

 それを払いのけるように彼に回した腕にギュッと力を込めた。


「千尋……千尋」


 ひとつになると、晃汰さんは決まって私の名前を何度も口にしてくれる。

 普段は聞くことのできない甘く切ない声は、私だけのもの。

 それが嬉しくて、汗ばむ広い背中に両手を回して抱きしめる。


「晃汰さん、もっと……もっと、呼んで」


 だから私はそれをおねだりする。

 名前を口にしてくれることに特別な意味はきっとない。

 だけど、愛されているような錯覚に陥るために求めてしまう。


「千尋……千尋──」


 これくらいのわがままは許してもらいたい。

 愛してくださいとは言えないから。

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