溺愛前提、俺様ドクターは純真秘書を捕らえ娶る


 まだまだ我慢のできるうちに痛みがなくなりホッとする。

 麻酔が効くと下半身の感覚は鈍くなり、足がぽかぽかと温かい感じがしてくる。

 でも不思議なことに上半身の感覚はなにも変わらない。

 出産後、すぐに赤ちゃんを抱くことができると説明されていたけど、これなら本当に大丈夫そうだ。

 痛みはなくなっているものの、実際は陣痛は進んでいて、助産師が子宮口の開きをたまに確認する。

 分娩に向けて体に変化が起きているのが、徐々に周囲が慌ただしくなっていっていることで察する。


「あの、晃汰さん……?」


 変わらずそばで私の手を握ってくれている晃汰さんに顔を向ける。


「どうした?」

「私、どのタイミングで力んだりすればいいのかと。指示してもらえるんですよね?」


 そう訊くと、晃汰さんはなぜだかホッとしたような微笑みを見せる。

 そして、「よかった」と独り言のように呟いた。


「それがわからないくらい、陣痛の辛さはないんだな?」

「は、はい……大丈夫です」


 私が苦しんでいないと知って、ホッとしたのだろう。晃汰さんは両手で私の手をしっかりと包み込んだ。

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