溺愛前提、俺様ドクターは純真秘書を捕らえ娶る


「改めて……この子を、産んでくれてありがとう」


 ありきたりな言葉しか言えない自分がもどかしい。

 なにかもっと相応しい言葉を。そう思っているうち、千尋の方からも俺に腕を回した。


「晃汰さんがそばにいてくれたから……だから、頑張れたんですよ」


 腕にギュッと力を込め「ありがとうございます」なんてお礼の言葉を口にする。

 言葉には表せない愛しさが胸を熱くさせ、無意識にさらにきつく千尋を抱きしめていた。


「でも、産んで終わりじゃないですもんね。ここからがまた新たなスタート」

「そうだな」


 新たなスタート……。

 家族が増え、また新しい物語が始まっていく。


「千尋も、この子も、必ず幸せにすると約束する」

「晃汰さん……。それは、私も同じ気持ちです。晃汰さんも、この子も、私が幸せにしたい」


 どちらからともなく腕を緩め、顔を確かめ合うように見つめ合う。

 ふたりの顔が近付き、唇が触れ合いそうになった時……。


「ふぇっ、ふふぇっ」


 手をぱたぱたと動かしながら、息子が声を上げて泣き始めた。

 口づけを中断され、ふたりしてクスクスと笑い合う。

 こうして、たくさん笑い合い、時には苦しみも悲しみも共有しながら、夫婦の、家族の絆を強めていけたら──。

 ここから新たに始まるストーリーに、明るく幸せな未来を思い描いていた。



Fin


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