溺愛前提、俺様ドクターは純真秘書を捕らえ娶る
「あ、あの……今、なんと」
「俺の妻になれと言ったが?」
改めて聞き間違いではなかったことが確認できたものの、それはそれで更なる困惑が広がる。
「お言葉ですが院長……仰ることの意味が理解できません」
至って真面目に訊き返しているのに、水瀬院長は何がおかしいのかふんと鼻で笑う。
「この間、ホテルで会っただろう。小野寺のお母様が倒れた時。あの時、俺も見合いだったんだ」
「えっ、そうだったんですか」
まさか、水瀬院長も私同様お見合いの席であのホテルを同日に訪れているとは思いもしなかった。
水瀬院長のプライベートは、私からすればベールに包まれたようなもの。
どんな時間をどんな人と過ごしているかなど全く知り得ない。
やはり、この病院を継承する人間として、会長も良き相手との結婚を求めているのだろうとは察しがつく。
「俺も、そろそろ身を固めろと両親がうるさくなってきてな。弟が結婚して子どももできたから、尚更急かされるようになった」
「そう、でしたか……」
これまで聞くこともなかった水瀬院長のプライベートな事情。
あの穏やかで優しい会長に結婚を急かされているのかと、ぼんやり考える。