溺愛前提、俺様ドクターは純真秘書を捕らえ娶る
「あの、でもそのお見合いは……?」
「ああ、その気がなかったからな。即日丁重にお断りだ」
それならなぜ、私に妻になれなどと言うのだろうか。結婚する気がないからお見合いを断ったのでは……?
「よく知りもしない相手と一緒になる気はないからな。その点、小野寺だったらこれまで仕事を共にしてきた間柄だ。一日の中で一番一緒にいる時間が長いんだからな」
「そうかもしれませんが、それとこれとは話が……」
確かに、水瀬院長についてからは約三年。勤務時間が週休二日で平均八時間だとすれば、単純に計算して六千百二十時間は越えている。
「互いに求めているものは合致している。小野寺は結婚して子どもが欲しい。俺も結婚して跡継ぎを求められている。一緒になれば都合がいいだろう」
戸惑う私を前に、水瀬院長は淡々と業務について話すような口調でそんなことを言う。
私の方は戸惑ってそれ以上の言葉が探し出せない。
「結婚して、子どもが欲しいというのもありますが……実は、今回の縁談は、父の会社経営の手助けをしていただく目的もあって……」
本当は政略結婚という事情は知られたくなかった。
でもしかし、水瀬院長がこんな気まぐれのようなことを言い出した以上、こちらも事情があることを知らせないと納得してもらえない。