溺愛前提、俺様ドクターは純真秘書を捕らえ娶る
「失礼いたします」
いったい何を話されるのだろう。
会長に水瀬院長、ふたりと向かい合って話をするなんてシチュエーション、私が会長の秘書から水瀬院長の秘書に変わる際の挨拶の時くらいだ。
ふたりの前に腰を下ろした途端、いよいよ緊張が増し始める。
「仕事前に悪いね」
「いえ。なにかありましたでしょうか?」
会長は私と目を合わせ、表情を緩める。そして「そんな構えないで」と、目尻に皺を刻ませた。
「そろそろ結婚を考えていると、晃汰から聞いたよ」
「あっ……はい」
会長から〝結婚〟のフレーズが出てきて、どきりと鼓動が音を立てる。
まさか私個人の、しかもその話題とは思いもしない。
「晃汰にも、そろそろいい相手が見つかればと思っていてね。どうかね、晃汰と一緒になる気はないかな」
「えっ……私が、ですか」
思わず訊き返した私に、会長は即答で「ああ」と頷く。
ちらりととなりの水瀬院長に目を向けると、特にいつも通りの表情で視線を泳がせていた。