溺愛前提、俺様ドクターは純真秘書を捕らえ娶る
車は区役所の駐車場へと入っていく。
婚姻届の提出は、開庁時間外、三百六十五日、二十四時間いつでも受けつけている。
なろうと思えばどんなタイミングでも夫婦になれるのだ。
車を降り、私も助手席から降ろした水瀬院長は、迷うことなく夜間受付の窓口へと足を進めていく。
その手には、用意してきた書類が入るA4サイズの定形外封筒がある。
業務時間中と同じようにその背中の後を追って歩いているのに、目的が私たちふたりの婚姻届を出すためというのが未だに現実味がない。
そう思うと、よくわからない焦燥感に襲われ、窓口の寸前で無意識に後方から水瀬院長の腕を掴んでいた。
「あのっ」
「……? どうした」
「あっ……あの、本当に、提出、するんですか?」
「なに? ここまで来てその質問か」
脚を止め振り返った水瀬院長は、どこか呆れたような顔を見せる。当たり前だ。すでに記入を済ませているのだから。
でも、ここで最終確認しなければ、もう私たちは本当に夫婦として成立してしまう。
水瀬院長は本当にそれでいいのだろうか。私は……?