溺愛前提、俺様ドクターは純真秘書を捕らえ娶る


 頭の中であの時の光景を思い返し、その艶っぽい表情に胸が高鳴る。

『こうやってキスを迫られたら、目は瞑るものだと思うけど』

 こんな顔をするのかと、暴走した鼓動がなかなか落ち着かなかった。

 それに、キスがうまかった……。

 誰かと比べられるほど経験が豊富なわけではないけれど、なんとなく感覚的にそう思えた。

 今まで、晃汰さんのプライベートについて考えたことなどほとんどなかった。

 交友関係も、プライベートなものは把握していない。

 女性関係などもまったく知らないけれど、間違いなく経験は豊富に違いない。

 どのくらいの人数、お付き合いした人がいるんだろう……?

 そんなことを考えていた時、何かが動くのを目の端に捉える。

 ぴたりと動きを止め、嫌な予感が気のせいだと願いながら顔を向けた。


「っ……!」


 ひゅっと、驚いた自分の吸い込んだ息がそんな音を立てた。

 突如そこに現れたのは、体長一センチ程度の黒い蜘蛛。

 私に見つかり、まるでだるまさんがころんだでもしているように動きをピタリと止める。

 どうやら私が持ち込んだ荷物の中に紛れ込んでいたようだ。

 どうしよう。どうすれば……。

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