私だけを濡らす雨/ハードバージョン
突入の途➊



凄惨極まった狂気の愛の儀式?は、ようやくその幕を閉じた。
約1時間強、イカレマックス女の郡氷子に介添えという、実に憂鬱なミッションを半ば遂げた藤森と板垣は、当該儀式の会場となった廃工場から撤収する準作業にフルスピードで取り掛かっていた。

「ここを出れば、解放される。藤森、急ごうや!」

「おお…。1秒でも早くココから撤収だ。あとは、あの狂ったオンナと中坊を5キロ先の桜木家に届けて、さっさとおさらばしようぜ!」

「ああ…、だがよう、そこですんなりあの人が俺たち二人を開放するかな…?もしかしたら…、その後も付き合えとかはないか?」

「板垣…、次の会場では、間違いなく死人が出る。そこに俺たちがツラ並べてたら、マッポに連行だ。んなの、絶対NGだぜ!いいか…、あっちに着く前に、氷子さんから二人のフェイドアウトを言質とろう!」

「うむ…。なにしろ、それを一番で優先だな」

「ふう~、桜木のボウズはこの辺りが限界だ。変にキレて発作など起こさぬうちに、こっちはトンズラだ。そこをクリアすれば、大きな実入りが叶う…」

「わかった。とにかく、桜木んとこの到着するまで、氷子さんを刺激しないでやり過ごそう」

「了解!」

約10分後…、勝俣の部下二人はまるで早送りのビデオテープのような素早い驚異的な段取り作業を終え、ワンボックス車に乗り込み、惨事の現場から速攻で立ち去った。


***


次の現場…、おそらくはさっきを勝る惨劇が展開されるであろうネクスト会場への移動の間…。

板垣が運転するワンボックス車の後部座席には、目もうつろで放心状態の背中から血を流している桜木ケン、そしてその小柄な中学生をこれまた血のりが乗っかった両手で、まるで聖母のように抱き寄せる郡氷子が何とも異形なるツーショットを醸していた。

で…‼

「ケン坊…、アンタはなんてステキなオトコなの…❣ああ、背中の血、いい匂いだわ~。クンクン…」

氷子はそう言いながら、長い舌を自らの手で切り裂いたケンの背中から滴り流れている血ノリをペロリ、ペロリ、チュパチュパと、啜り舐めていた。
トロンとした目で…。

この生々しい郡氷子の異様行動をバックミラー越しで”覗き見”していた藤森は、一瞬、この真っ最中だったカノジョと目が合った。

”勘弁してくれ~~。あの目、イッてるって…”


***


「ケンちゃん~~、愛してるわ…、ああ…」

移動時間約20分間…、郡氷子はテメーで散々傷つけた少年を抱きよせ、頬づりして、陶酔状態に陥っていた。

嵐の前の静けさか…、狂気が火を噴く着火寸前か…。

午後8時40分ちょうど…、4人を乗せたワンボックスは桜木邸から約150メートルの坂の上に停車した…。
かくて、稀代のイカレ女は己の凶暴極まる血に従って、ラストステージたる桜木邸への突入へ秒読み段階を迎えるのだった!



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