シルバーブロンドの王子様が甘すぎる〜海を越えた子守り唄

「どうしました?なにか異物でも…?」

マリンさんが訊ねてきたから、慌てて涙を拭って首を横に振った。

「すみません…なんでもないです。その…パンがあまりにも美味しくて……こんなに美味しいパンを食べたのは生まれてはじめてなんです」
「そうですか」

無関心そうな淡々としたマリンさんの声。でも、言わずにいられなかった。

「わたし、子どものころの食事は学校の給食がすべてでした」
「…………」
「パンがあれば3分の1だけ食べて、残りは持って帰って夜と朝ごはんにしたんです。食パンが2枚出てきたら最高でした。もしもの時のために1枚は残して隠すんです。土日祝日休みの時は隠したパンを食べますが、カラカラに乾いてるのはいい方で、時には全面にカビが生えたりしてましたけど…それでも食べないと、他にはなにもないので我慢して食べました。何日も腹痛に苦しむことがわかってても…
だから、こうして焼き立てを食べられるのは当たり前じゃない、幸せなことなんです」

だからこんな贅沢は当たり前じゃないし、いつまでも続くものじゃないとわかってる。わたしはそう思いながら、パンとお肉とサラダを少しいただいだだけで満足して、ごちそうさまでしたと手を合わせた。

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