シルバーブロンドの王子様が甘すぎる〜海を越えた子守り唄
カイルがスマホを手に、アベルさんと連絡が取れたみたいだった。
「……どうやら、アベルたちは迷路広場にいったらしいな」
「反対方向だね」
「ああ、くるみはどうする?」
「しばらくぼんやりしたいかな…」
「……そうだな、たまにはいいか」
スマホをポケットに仕舞ったカイルは、ベンチの背もたれに身体を預け両手をググッと挙げて伸びをする。
頭の後ろで腕を組んで、空を仰ぎ見てた。
さわさわと風が梅の木をゆらし、遠くから鳥の囀りが聞こえる。澄み渡る空は雲ひとつなくて、あたたかな陽射しが身体を暖める。
「……たまにはこんな時間を過ごすのもいいな……いつもいつも、全力疾走するような毎日だからな」
まぶたを閉じたカイルは、心底リラックスしているように見える。
ピィーピィーと、知らない鳥の甲高い囀りが2度聴こえてから、カイルはいきなり身体を倒して、わたしの太ももに頭を載せた。
「ちょ、カイル…!」
「ちょっとだけだ…くるみ」
「なに?」
「あの歌を……子守り唄を、オレだけに聞こえるように歌ってくれないか?」
まるで懇願するように、カイルは頼んできた。
なんだか逆らえなくて、わたしは口を開く。
「イル、タゥート、デマス…アーク、ダ、トールディアルガ……」
つぶやくような、小さな小さな声で口ずさむ。
するとやがて、カイルの寝息が聞こえてくる。
その寝顔は無垢な幼子のようで…。
知らずしらず、彼の頭をゆっくりと撫でていた。
あの、思い出の女性のように。