シルバーブロンドの王子様が甘すぎる〜海を越えた子守り唄

「王子様…?」

わたしが呆然と呟くと、マリンはわたしの肩を掴み、しっかりと目を合わせて断言した。

「そうよ、くるみ。確かに、カイル様はシルカー王国の第一王子殿下よ。でも、間違わないで。彼はあなたを本当に大切に思うからこそ明かさなかったの」
「ハハハハハ!なにが大切だ!カイル王子には本国に婚約者がいるんだよ!ほら!!」

シャッと飛んできた1枚の写真は、ちょうどわたしの胸にぶつかって落ちる。手にした写真には、本物のブロンドを結い上げた、美しく清楚な女性が写ってる。

「オパーリン公爵令嬢さ。あんたとは、身分も美しさも教養も国民からの人気も、何もかも違うねえ〜将来の王妃として申し分ないよ」

王妃…?国王陛下に…なるの?カイルが…。

頭が、真っ白になる。

気がついたら、ぽたぽた…と写真に涙が後から後から落ちていった。

「くるみ…」
「あれ…おかしいなあ…なんで涙が……カイルが王子様って……手が届かない人って知ってたはずなのに……」

カイルに贈ってもらえた指輪を指先でなぞる。そして、ハッキリと自分の気持ちを形にした。

「でも……それでもわたしはカイルが好きよ。たとえ利用されていても……大好きだから!!」

そんな想いは、女に嘲笑された。

「ハハハハハ!滑稽だねえ!叶わない恋、ってやつか。面白いねえ、あのガリガリのガキがいっちょ前に色づいたわけだ!」
「あんた……サイテーね!趣味悪いし…あたしの気分が悪くなったわ!」

カシュッ、とマリンの体から白刃が煌めいた瞬間、数人の男が襲いかかる。

「はっ!」

白刃一閃。
腕を軸に回転蹴りをお見舞いしたマリンは、そのまま男たちを切り捨てる。ほんの数秒後、男たちがどうっと倒れた。

ふわ、と着地したマリンはそのまま、スカートを摘んで優雅にお辞儀した。


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