シルバーブロンドの王子様が甘すぎる〜海を越えた子守り唄



「イル、タゥート、デマス…アーク、ダ、トールディアルガ。マーム、イル…ダシェーテ…」

わたしが最後まで歌いきると、パチパチと拍手が鳴り響いた。

目の前の玉座に座られた女王陛下のお手から。

「見事です、くるみ。確かにシルカー王家の女性のみに伝わる子守り唄ですね」

女王陛下をはじめ、シルカーの上流階級の方々は流暢な日本語を話されるからホッとした。

「恐れ入ります、女王陛下」

わたしが礼を取ろうとしゃがみ込むと、女王陛下は慌てて制止された。

「駄目ですよ、くるみ。まだお腹に子がいるとわかったばかしなのですから。身体を労らねば」

薄茶色の髪の毛を結い上げ、東南アジア独特の色鮮やかな民族衣装に見を包んだ現シルカー王国のナナミ女王陛下が、カイルと同じ蒼い優しげな眼差しをわたしにくださる。

「カイル、きちんと妻の体調を把握してますか?やるだけやって、知らん顔じゃないでしょうね?」

じっとりとした目で母から見られた息子は、バツが悪そうながらも、しっかりとわたしを後ろから抱きしめた。

「それはもちろん……今が妊娠6週と3日目で、予定日は10月2日と把握してますから」

しれっとそつなく答えたカイルは、ちゃっかりわたしの耳にキスをしてくる。

「ちょ、カイル……みんなの前なのに…!」
「…まったく、カイルは誰に似たやら…父親とは違うわね、ね。シン?」

あきれ顔の女王陛下は、傍らに立つ寡黙な夫の王配殿下に問いかけた。
王配殿下は短めの黒髪とわたしと同じ赤い瞳をされていらして、整った顔立ちが息子のカイルとよく似ていらした。

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