冷徹パイロットは極秘の契約妻を容赦ない愛でとろとろにする


翌朝、午前十時三十分。

『――Report ready?』(離陸準備は如何でしょうか?)

「Ready for departure」(準備OKです)

『sakuraairline 122 cleared for takeoff. good day』(サクラ日本エアライン122便、離陸を許可します、いい一日を)

コックピットで航空交通管制――管制部と離陸許可の無線交信を行い、滑走路に入る。
今にも降り出しそうそうな重たい雲に向けスピードを加速させていく。風の抵抗も受け、機体が激しく揺れた。

なんとか滑走路を離れ浮遊感を感じた直後。
副操縦士である柊の「え?」という声が聞こえ、視線だけを横に投げる。

「どうした?」

「レバーが戻りません、ロックがかかっているみたいです」

降着装置の収納部分に、不具合が発生したようで焦りの色を浮かべている。
肝が冷えていくのを感じながら、那覇の管制塔に真っ先に連絡をとり、機体の状態を目視してもらう。
数分の沈黙ののち、ザザッと砂嵐の音が聞こえ管制部と繋がった。

『122便コントロール、前脚が進行方向に向かって真逆に曲がっているようです』

(何? そのせいで前輪が収納できずに、レバーが引けないってことなのか?)
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