冷徹パイロットは極秘の契約妻を容赦ない愛でとろとろにする
前輪が正常の位置に戻ることを願い、何度か機体を上下に動かしてみるがビクともしない。完全に壊れておりこの状態での着陸は絶対なようだ。

「――…ラジャー、那覇に戻りたい。二万三千フィートまで降下したいがどうか」

『ラジャー、右回りでいきますか左回りでいきますか』

管制部と那覇空港の緊急着陸に向けやり取りを続けるが、不安定な気候と離陸直後の燃料の多さがネックになった。
着陸時に滑走路と前輪の摩擦で出火した場合、大爆発になりかねない。
結局しばらく上空で飛行を続け燃料を減らす必要があると判断し、管制部に伝える。

『このまま羽田に向かってください』
「ラジャー」

顔面蒼白の柊を見つめ、小さく頷く。

「大丈夫だ、冷静になれ」
「はい」

(絶対に成功させる、まだ安奈に想いを伝えていないんだ)

先が見えない真っ白な空に視線を戻し、操縦桿を握る。
機内アナウンスのスイッチが入ったことを確認すると、緊張を落ち着かせるため息を吸い込んだ――。







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