冷徹パイロットは極秘の契約妻を容赦ない愛でとろとろにする



帰宅して玄関の扉を開けると、甲高い赤ちゃんの泣き声が大音量で聞こえてきた。
焦りと逸る気持ちを抱きながらすぐさま靴を脱ぎ、長い廊下を駆け巡る。

「ただいま」

「あ、駆さんおかえりなさーい」

リビングの扉を開いてすぐ、パジャマ姿で髪を下ろした安奈がソファに腰かけ笑顔で振り返る。
彼女の腕に抱えられているのは、生後二カ月目の長女の萌乃(もえの)だ。
瞬き一つせず哺乳瓶を加え、ごくごくと元気な音を立ててミルクを飲んでいる。
穏やかな空気を感じ、ほっと安堵してすぐにもう一人の愛娘の姿を探す。

(いた。気持ちよさそうにしているな)

安奈の前に置かれている電動ベビーバウンサーに揺られ、すやすやと気持ちよさそうに寝息を立てているのは、次女の春乃(はるの)
そう――俺たちは一気に二人の子宝に恵まれたのだ。
普段、双子の妹の春乃のほうが断然眠りが浅いので、もしかしたら相当泣いた後なんじゃないかと予想する。

「遅くなってごめんな。春乃の機嫌大丈夫だったか?」

「うん、ずっとご機嫌だったの。ついさっきまでお義母さんがあやしてくれてね、声を上げて笑ってたから疲れたのかもしれない」
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