冷徹パイロットは極秘の契約妻を容赦ない愛でとろとろにする
エピローグ
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安奈と俺が結婚してから俺たちを取り巻く環境はがらりと変わった。

安奈は俺と結婚したことが知れ渡った直後は、あらぬ噂を立てられて仕事をやり辛そうにしていたが、彼女が堂々とした振る舞いを続けるうちに周囲も慣れ、俺たちをオシドリ夫婦として受け入れてくれるようになった。

あれから二年という月日が経ち、ゴールデンウィークを間近に控えた四月下旬――。

「五十嵐さん、今日新人たちと飲みに行くことになったんですがいかがですか?」

フライト後に反省会を終えた直後、久しぶりにタッグを組んだ副操縦士の柊に呼び止められる。
……が、一分一秒も惜しく、歩みを進めながら断りを入れる。

「すまない、子供が生まれたばかりで早く帰りたいんだ。しばらくは飲みに行けない」

「えっ! そうだったんですか!? すみませんでした、呼び止めちゃって!」

「いや、いいんだ。じゃ」

(午後五時、退社)

更衣室の扉を開きながら腕時計で時間を確認する。
ちょうど沐浴が終わった頃だろうか、授乳次第ではまだの可能性もある。
そしたらギリギリ風呂に入れられるかもしれない。なんせうちの家は、すべて倍の労力(・・・・)がかかる。
安奈を支えなければという使命感と我が子に会える喜びで、鼓動が高まっていった。
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