冷徹パイロットは極秘の契約妻を容赦ない愛でとろとろにする
「大丈夫だよ。疲れてないわけじゃないけど、可愛さも二倍だから」

安奈は頑張り屋なので、無理はしているだろうと察する。
彼女の肩を引き寄せ、自分の懐の中に招き入れた。

「駆さん……」

動いた風と一緒に、安奈が元々纏っている陽だまりのような香りと、赤ん坊のミルクの香りが混ざって運ばれてくる。
その優しい香りは俺の嗅覚を刺激して、心まで染み入ってきた。

「いつも頑張ってくれてありがとう、安奈」

腕の中にいる安奈に伝えると、彼女は力強く抱きしめて返事をくれる。

(安奈と家族を持てて幸せだ)

安奈を抱きしめながら、ベビーバウンサーに揺られている萌乃と春乃を眺める。
一卵性双生児で、姿かたちがまったく同じふたり……。
まだ生後二か月なのでどっちに似てるかはっきりと判別できないが、目の形、鼻の形からして安奈だろう。

安奈ひとりでも可愛くて、時折自分を見失いそうになるというのに。
萌乃と春乃という安奈に似た愛らしい天使まで恵んでくれるなんて、もうこれ以上の幸福はないだろうと本気で思う。

「安奈、今週の休みは俺が面倒を見るよ」
「えっ……」

俺の提案に驚いて体を離した彼女に、微笑みかける。

「ひとりの時間も必要だろう。ショッピングでも、映画でも楽しんできてくれ」
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