冷徹パイロットは極秘の契約妻を容赦ない愛でとろとろにする

真由子と彼氏さんはスマホでいくつかの結婚相談所と婚活アプリをピックアップして、笑顔で帰っていった。
なんて優しいふたりなんだろうと、温かい気持ちになる。

(はぁ……五十嵐さんとの契約結婚のこと、言えたら楽だったけど)

この非現実的な話を、ふたりが信じてくれるだろうかという不安。
そして相手のこともあるから、信頼している真由子であろうと、彼に許可なく簡単に口を滑らせるわけにはいかなかったのだ。

「ふたりが言っていた通り、一緒に生活したら良いところが見えてくるかもしれない」

まったく違う職種の男性と一から関係を築くより、既に人ととなりを知っていて生活スタイルが一緒の五十嵐さんと暮らす方が断然話が早いということは明らか。さらに彼には時計の恩もあるし。

(こ、ここまできたら、五十嵐さんが好きとか嫌いとかじゃないのかも)

ただただ家族を助けたい一心でスマホを手に取る。
それからさらに数十分考えた末、私は震える手で彼の番号に電話をかけた――。
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