必ず、まもると決めたから。
制服のポケットから携帯を取り出した青山くんは私に差し出した。
「俺の連絡先」
ああ、青山くんの携帯電話はシンプルな黒か。彼らしいな。
教室では見たことがない彼や、彼の私物が目新しくて、ひとつひとつ反応してしまう。
「ありがとう。登録しておくね」
仲良くなりたいと思っていたクラスメートと、こうもあっさり連絡先を交換できるとは思っていなかった。
うちのマンションまで移動しながら田中くんは言う。
「いつでも連絡して」
「……どうして?ここまでしてくれるの?からかってる?」
一度送り届けてくれただけでも有難いのに、これからも送ってくれるなんてーーましてや今日まで会話という会話をしたことがなかったクラスメートだ。冗談だと言われた方がまだしっくりくる。
マンションのエントランス前まで送られ、もう一度問う。学校で話しかけてはダメなら、今解決しておかないと。そもそも気になって眠れないよ。
「私、ここまで田中くんにしてもらうほど、何もしてないよね?」
「同じ数学係だから」
それが、田中くんのシンプルな答えだった。
「数学係?」
「それじゃぁ、また」
そう言って田中くんは踵を返す。
その歩く速さはいつも通りであっという間に姿が見えなくなった。
ああ、私の歩調に合わせて歩いてくれていたんだ、って今更気付いてしまった。