星と月と恋の話
昼食のお皿を片付けてから。

ようやく、元気を取り戻した。

はー。久々に酷使した脳みそが、悲鳴をあげてるわよ。

慣れないことをするものじゃないという、結月君の言葉、あれは本当ね。

…そんな訳で。

「さっきから、結月君に色々教えてもらうばかりだから、今度は逆よ」

「え?逆って?」

よくぞ聞いてくれたわね?

「私が、結月君に教えてあげるわ」

「えっと…何をですか?」

私が結月君に教えられることなんて、そう多くはないけど。

私は、戸棚に入れていたゲーム機を取り出した。

「ゲームしましょ」

「…」

そんな、鳩が豆鉄砲を食ったような顔しないでよ。

「…勉強した後、すぐゲームですか?」

軽蔑したような目で見るのもやめなさい。

良いじゃない、ゲームくらいしたって。

春休みよ?ちょっとは遊ばなきゃ。

「私だって、普段はそんなにゲームはやらないわよ」

たまによ。たまに。

ちょっとやることがないときとか、暇潰しにやる程度。

そこまでゲーマーじゃないから。私。

「でも、友達が遊びに来たときとかは、よく一緒にやるのよ。コントローラーも…ほらっ、予備がいくつかあるから」

「…こんとろーらー…?」

結月君、君って人は…本当にゲームをやったことがないのね。

基本的に、結月君はカタカナに弱いところがあると思う。

「はいはい、これ持って。何のソフトがやりたい?」

って、私もそんなに持ってる訳じゃないけど。

「何でも良いですが…」

「そっか。じゃあ…対戦ゲームの定番…。そうだな、『ロミオカート』やろう」

「…何ですか?その、ちょっとメルヘンなゲーム…」

結月君…国民的ゲームをご存知でないのね?

やったことはなくても、聞いたことくらいはあるものだと思ってたわ。

「この間、ゲームセンターでレースゲームしたでしょ?覚えてる?」

「はい」

「あれの、家庭用ゲーム版よ」

「えっ。あれ、家でも出来るんですか?」

まぁね。

ゲームセンターでやるのも楽しいけど、家庭で出来るのは、より手軽で良いわよね。

「最近はネットに繋げて、全国のプレイヤーと対戦出来たりもするのよ」

「そ、そんなことが出来るんですね…」

まぁ、今回は初心者の結月君がいるから。

ネットに繋げるのはやめて、CPUと対戦しよう。

全国のプレイヤーと対戦なんかしたら、結月君は良いカモにされてしまうわ。

「さ、まずはやってみましょ」

「わ、分かりました」

「あ、操作方法だけど、このボタンがアクセルで、こっちがブレーキね。で、方向キーがハンドルで…」

「む、難しいんですね…」

と、操作方法を簡単に指南して。

じゃあまず、1レースやってみよう、と始めてみた…けれど。
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