星と月と恋の話
「ほら見て!オムライス弁当」

私はタッパーに入れて持ってきた、お手製オムライス弁当を結月君に見せびらかした。

どうだ。

ちょっと寄り弁しちゃってるけど、割と綺麗に出来てる。

オムライスにかけたケチャップも、ちゃんとハートマークに見える。

可愛いぞ。頑張ったな。

「へぇ。結構綺麗に出来てますね」

おっ、結月君が褒めてくれた。

「でしょ?」

ちょっとふわとろな卵が、破れることなくケチャップライスを包んでいる。

火加減とか、結構気を遣ったんだよ。

ネットで、ふわとろオムライスのレシピを探しまくってさぁ。

「ちゃんと練習したんだから。偉いでしょ?」

「成程。それは偉いですね」

「でしょ?私だって、やれば出来るのだ!」

「そのやる気を勉強に活かしてくれたら、もっと良かったんですが…」

「よーし。じゃあ食べてみよっかー」

聞こえない聞こえない。

私なーんにも聞こえなーい。

畜生。

「じゃあいただきまーす。…もぐ」

「どうですか?」

「うん、美味しい」

ちょっと、自画自賛したくなるくらいには美味しい。

私あれかな。天才って奴?

って、すぐに天狗になるから良くない。

「結月君も食べてみてよ」

折角、シェフが目の前にいるんだから。評価してもらわないと。

「良いんですか?」

「良いよ。ちょっと試食してみて」

「では、失礼して…。一口頂きますね」

うん、宜しく。

これで、シェフの舌を唸らせることが出来たら完璧…だったんだけど。

「…むぐっ」

ガリッ。

「ん?」

結月君はオムライスを口に含んだまま、真顔で固まった。

…え?どうしたの?

なんか、今ガリッて音しなかった?

私の幻聴?

「…結月君、大丈夫?」

「…今、口の中で塩の塊噛み砕きました」

「…」

…ガリッて音がしたのは、塩の塊を噛み砕いた音だったのね。

成程、そういうこともある…。

…って、ないわよ。
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